557人が本棚に入れています
本棚に追加
/265ページ
記憶旅行
電話の直後、家のインターフォンが鳴って、登季子さんに大声で呼ばれた彩香は階段を駆け下りた。
数秒前まで電話で話していたはずの人が、なぜか玄関にいる。
「外から電話してたんですか……?」
そう訊くと、野本は僅かに微笑んだ。
いつだって欲しいものをくれる人……。
いつだって彩香に甘くて、何よりも優先してくれる人……。
「30分しか…時間が無いんです。すぐに戻らなくてはいけなくて」
野本はそう言いながら、首を傾げる。
「入ってもいいですか?」
訊かれて初めて、彩香は頷いた。
最初のコメントを投稿しよう!