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「気に入ったようで良かった。本当に美味そうに食べるな、ビリー。見ているだけで腹がいっぱいになりそうだ」
「え!? 食べないのか? 食べないなら、俺貰うぞ!」
「ものの例えだ。食べないとは言っていない」
今度は、赤ワインを含みながら、可笑しそうに肩を揺らす。
「このロイヤルミルクティーも美味い! 何て言うか……コクがある?」
「ああ。その表現は、的を射ているな。ウバ茶は、世界三大紅茶の一つで、スリランカの高地で取れる。昼夜の寒暖差がある土地のせいで、薔薇の花のような甘いウバフレーバーが作り出されるんだ」
「へええ……」
俺は食べ物を何か口にする度にわあわあ言って、オズがそれに注釈をつけてくれた。
凄い! テレビの食リポみたいだ! 俺は腹が減るからという理由で、バラエティの食リポ番組は余り好んで観なかったけど、食べながらだと倍も味が美味くなる事を、初めて知った。
そんなこんなで、会話の種には困らず、楽しい夕食は終わった。あとは、ベッドに入るだけ――。
「ビリー、主寝室を使って良いぞ。私は、使用人用の続き部屋のベッドで休む」
「へ? 何それ。夜這いプレイがしたい訳?」
「ああ……言っていなかったな。私はビリーを一晩買ったが、抱きたい訳じゃない。車の礼がしたかったんだ。だから一晩、ゆっくり眠ってくれ」
え――俺、札十枚貰っちゃったんだけど。罪悪感が、鋭い棘となってチクリと心臓を突き刺した。
「そういう訳にはいかない。俺に魅力がないのかなって思っちまう。せめて口で、サービスさせろよ」
「いや、ビリーは魅力的だが……仕事で疲れていて、そういう気にならないんだ。すまないが、何もしなくていい」
謝るなよ。何か、変な雰囲気。
「じゃあ……添い寝は?」
俺は、譲歩案を出した。何しろ、俺は一人じゃなかなか寝付けない質で、ねぐらではサムと抱き合って眠ってる。どっちかが居ない夜は、特大の熊の縫いぐるみを相手に眠るのだった。
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