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さよならの日
私のご主人が居なくなった日、ご主人の親戚が家に集まって来た。私とご主人が永く過ごしたこの家に人間がやって来たのだ。
家に来た人間は3人。短い茶色髪のお婆さんと肩までの茶色髪のお母さん、それから長い黒髪の高校生の少女。それぞれの服は上から下まで真っ黒だった。
私は、彼等の表情を下から覗き込むように3人の足元を縫うように一歩一歩慎重に歩く。
すると3人とも両の目も鼻も真っ赤だった。
(何故初めて来たこの3人は真っ赤な顔をして居るのだろう?)
(何故、彼等は何も言わず俯いて居るのだろう?)
私は、不思議でならなかった。だってご主人は昨日から居ないだけで今日には戻ってくるはずなのに。私は、再会を笑顔で迎えようとしているのに何故彼等は泣いて居るのだろう。
不思議で仕方ない。
特に、少女は今にも泣き出しそうにしながらも必死に涙を堪えている。
その時、少女の長い髪が大きく強い風が吹き顔を覆い隠すように揺れた。それを見た私は悟った…
(ご主人は亡くなったんだ…もう帰っては来ないんだ…)と…
彼等は、ご主人の生前の暮らした家を証をその目に焼き付けに来たのだと私は悟った。
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