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神とはいえ、会ったばかりとの男との生活に最初は困惑したが、タタリの優しさにかおるは惹かれていった。
それはタタリも同じで、人間のかおるとの日々を愛しく思った。
ふたりが今の生活にすっかり馴染んで、4年の月日が流れた。
かおるは20歳になり、すっかり大人びた。
「ねぇ、タタリ。こんなに天気がいいのだから、川辺さ行って団子でも食べよう」
4年も経つと、かおるは敬語を使わなくなった。
「せやなぁ、日向ぼっこもしよか」
ふたりはどちらからともなく手を繋ぐと、川辺を目指して歩き始めた。
「かおる?かおるかい……?」
途中、懐かしい声に名前を呼ばれる。
そちらを見ると、両親がいた。ふたりともシワや白髪が増え、疲れきったような顔をしている。
「おっかちゃんにおとっちゃん!?なんでここへさいるんで?」
かおるは目を見開き、固まった。
ふたりは駆け寄り、かおるを抱きしめた。
「ごめんね、かおる……。もう媼様は亡くなったの、集落はもう、自由なんだよ」
「皆集落を捨てて、外の世界で暮らすんだ。かおる、一緒に暮らそう!」
ふたりはタタリを見ると、土下座した。
「祟り神様、勝手とは存じますが、かおるを返してください!」
「たったひとりの愛娘なんです、お願いします!」
(あの時助けてくれなかったくせに、なんで今更……。何も知らないくせにタタリと引き裂こうなんて、そんなの勝手だ……!)
ふつふつと、かおるの中で怒りがこみ上げてくる。
「さよか。なら、連れて帰りゃあいい」
タタリはかおるの手を離し、淡々と言った。
「え……?」
かおるは呆然と、タタリを見た。
「本当ですか?ありがとうございます!」
「さ、かおる、行くぞ」
両親はかおるの手を掴もうとする。
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