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かおるはそれらを振り払い、まっすぐタタリを見た。
「なんで!?タタリはオラが嫌いか?嫌になったか?オラ、帰りたくねぇ!タタリと一緒がいい!」
かおるが心の内を吐き捨てると、タタリは愛おしげな、哀しそうな目でかおるを見つめる。
「あんさんの事は愛しとうよ。けど、こうして親が迎えに来た。4年も経っとるのに、かおるが生きとるん信じて、ここまで来はった……。それは幸福な事なんよ。せやから、さいならや」
「嫌、嫌!タタリと一緒じゃないと嫌!」
タタリは泣きじゃくるかおるを優しく抱きしめた。
「ちゃーんと人間として幸せになり?それが自分の幸せや。ほなな、かおる。達者でな」
タタリは風と共に消えた。
「かおる、帰ろう」
「祟り神様だってあぁ言ってくださった、帰ろう」
かおるは失意のどん底にいるまま、両親に連れられ、山から降りた。
それから数年後、かおるは大阪で暮らしていた。
仕事もして、友達も出来た。
今日は友達と遊んでいた。
「今日は楽しかったわぁ。ほなな、かおる」
「うん、またね」
友達と笑顔で別れた後、かおるはそっと、涙を流した。
「ねぇタタリ……。“ほなな”は“また会おう”って意味で使うんだって。貴方物知りなのに知らなかったの?」
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