マリアを、笑うな。

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少女は笑うと、紅茶の匂いを嗅ぎ、うっとりと目を瞑る。 「そ、そうなのね……。貴方は今、施設にいるのね」 「はい。私は赤ん坊の時に、施設の前に捨てられていたので」 「……捨てられていた」 心無しか、女性の両手が震えていた。 緊張し強ばった頬を女性は何とか繕い、また笑顔で話し始める。 「貴方に私はどうしても会いたかったの」 「私に、ですか?」 少女は首を傾げる。 「えぇ。貴方の絵を見た瞬間にとても衝撃を受けたから」 女性の言葉に少女は少しだけ眉を顰める。 「記事なら私も読みました。ネットは、色んなデマが出回っていて施設長がみせてくれませんでした。でも記事はすべて、図書館で閲覧できるものはすべて見ました。中学生だから、と言い訳するつもりありませんが、寄って集って酷い中傷でした」 少女も知っていたのかと女性も胸を痛めた。けれど、少女は笑って言う。 「記事に踊らされて、ネットもさぞかし賑やかなんでしょうね。私、携帯持ってなくてよかった」  記事だけでも目に余る内容だったのに、少女は逞しく笑って跳ねのけている。  その強さが、あの絵画の美しさに現れているようだった。
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