美形(浮気)×平凡

1/1
96人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ

美形(浮気)×平凡

俺には、付き合っている恋人がいる。多分。 多分、がどうしてもついてしまうのは自分自身でもこの関係に半信半疑なのだ。 そもそもとして、男同士で恋人と言ってしまっていいのかという引っかかりがある上に、あっちはクラスの中心人物、こっちはいるんだかいないんだか分からない程度の人間だ。 なんで、こうなったと思わない訳では無い。 ただ、もうあっちは飽きてるだろうなと思った。 音楽室へ向かうために友人と廊下を歩く。 目の前に居たのは俺の恋人のはずの男で、その筈なのに、あいつのクラスメイトだろう女子の腰に手を回し密着している。 思わずぽかんとその様子を眺めてしまう。 そうしていると、あいつと目が合って慌ててそらす。 モヤモヤした気持ちを追い払う様に、早歩きでその場を後にする。 何で、こっちが気まずい気分にならなきゃいけないんだ。 不公平だと思った。 あんな風に密着して、あれはもう立派な浮気だ。 普通友達とあんなにスキンシップは取らない。 なのに、怒る方法がもう分からなかった。 今日みたいなのは、これが初めてじゃ無かった。 泣いてわめいて怒ったほうが良かったのかもしれない。 でもそれで何とかなるとは思わなかったのだ。 片や、可愛い女の子で、片や、平凡な俺。 太刀打ちできるとは思わなかった。 実際オープンに付き合うなんざ、無理なことで、あいつにとって恋愛を楽しみたい気持ちもきっとあって、それを俺は上げることはできない。 結局、仕方がないこととして片付けることにした。 一人になった時に泣けばいいと思った。 家に帰って一人になったら泣いて、それであいつが俺との時間を作ることに飽きるまで一緒にいられればそれでいいと思った。 ただ、あいつが俺に飽きるのが少しでも先ならいいと願った。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!