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「柚さん、飯どうします。」
「んー。」
生返事の柚さんの視線は手元のスマホだ。
そういう俺も一瞬柚さんを見たものの既にスマホを見ている。
大学のサークルで知り合った柚とはソシャゲ好きが縁で付き合い始めた。
元々、ゲーム好きだというのは知っているし、いまお互いにはまっているゲームのイベント期間なので、必然的にこうなるのだ。
お互いに彼女とはそれで失敗しているから、こういう気楽な関係がすごく心地いい。
例えそれがクリスマスイブであってもいつもとさほど変わらない。
欲しい物と聞かれてもリンゴのカードとしかお互い言わないだろうし、特に今日何かをする予定も無い。
「コンビニいきます?」
手を動かしながら聞く。
「あー。」
相変わらず生返事なものの、柚さんはふらりと立ち上がる。
もともと柚さんはあまり口数が多くない。
意味もなくうるさいのが嫌いな俺にとってはこちらの方がよかった。
さすがに歩いているときはスマホはしまっている。
真っ暗な道をお互いに無言でコンビニに向かう。
ぼんやりと眺めると柚さんはフラフラとおぼつかない足取りで歩いている。
それもいつものことで、いつもいつも可愛いと思っている。
まあ、それを伝えたことは無いのだけど。
コンビニについて適当に食べるものをかごに放り込む。
「柚さんチキンとか食べます?」
「んー。……メンチカツ。」
店員にチキンを一つ、メンチカツを一つ頼んだ。
コンビニを出てすぐに袋から柚さんの分のメンチカツを取り出して渡す。
それから自分の分のチキンを取り出す。
紙袋をちぎって開けて柚さんのメンチカツにそっとぶつける。
「はい、かんぱーい。メリークリスマス。」
軽い調子で言うと、柚さんはへにゃりと笑う。
恋人になるまで見せてもらったことの無かった笑顔に、少しだけ優越感。
「帰ったらもうちょっと周回頑張りましょうね。」
相変わらず柚さんはふらふらと歩きながら、こちらを見てそうだねと笑った。
END
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