境目

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呑気に鶯が鳴いたと思ったら犬が遠吠えをして、台所の窓から西陽が差し込む。 春休み。 私は皿洗いをしていて、お姉ちゃんは煮物を作っている。 うちの水道水は井戸水を使っているのでとても冷たくて、手がヒリヒリ痛くて丁度いい。 感情を抑えるのに丁度いい。 「あんたなんか……だから」 聞いた瞬間に体がボコボコと熱くなって中身を忘れた。 いつもの事。 流せば終わる、毎日の事。 手の中で煌めく包丁が目に入った。それから目が離せないでいるとお姉ちゃんが言う。 「刺したいんでしょ」 ボコボコが酷くなる。 「えー何でそうなるの?」 私の口が滑らかにそう言った。 今、私が捨てたものは何だったろう? 確かに何かを捨てたのに、身体中ひっくり返して探してみても空っぽで分からない。 この瞬間から変わってしまった私。 もう子供じゃなくなった私。 きっと、これも青春でしょ。
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