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「お願いですから、やめてください。今はあなたとそんな気分にはなれない!」  語気を強めて必死に抵抗をするが、佐藤は薄く笑った。 「血があれば、その香りを嗅ぎつけて獣は寄ってくるんだ。そして獣が、餌を目の前に容赦なんかするか?」 「何言っているんです。意味が分からない!」  スラックスのボタンが外され、下着と共に蹴り下ろされた。佐藤の一瞬の隙をついて桜井は彼を強く押しのけ、身体の下から抜け出したが、足元に纏わりつく衣服が、まるで足枷のようになって、うまく動けない。  それでもなんとかベッドから滑り降りた瞬間、桜井は後ろから突き飛ばされ、目の前の壁にしたたかに頭をぶつけた。 「くっ……!」  さらに壁に頭を押し付けられ、その衝撃で桜井の眼鏡が床に落ちる。 「なに、を……」 「大人しくしておけ」  行為は暴力的なまでに激しいのに。その声は平坦で硬く、絶対零度の冷たさを帯びている。  情熱と冷静の間なんてもんじゃない。佐藤の中ではいま両方の感情が不安定にぶつかり、それが強烈な毒を孕んで、歪で激しい欲情の渦を生み出している。 「嫌だ……こんなの」 「そうか、わかった」  佐藤は桜井の腕を強引に掴むと、無造作に桜井の身体をベッドに引き倒した。 「あっ!」  一瞬だった。     
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