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 彼は桜井の抵抗を読んだのか、起き上がる隙も与えない。俯せに倒れ込んだ桜井の両手首を捕らえると、そのまま後ろ手にねじあげて拘束する。  その力はとんでもなく強く、桜井は痛みに顔を顰めた。 「立ったままは嫌なんだろ? だったらベッドの上でならいいんだよな?」 「冗談……」  地の底を這うような低い声の命令を拒み、桜井は横の窓ガラスに視線を走らせた。  佐藤の横顔は、まるで能面のようだった。ガラス窓のせいで色彩がぼんやりしているせいか、表情の冷たさだけがやけに際立ち、そのガラス玉のような感情のない瞳が桜井を睥睨している。 「放して。私はこんなことをするために来たんじゃ」 「ふうん、それが人に物を頼む態度かよ? いいぜ、激しく犯してやるよ」  佐藤は桜井の下腹に手を差し入れ、まだ萎えている桜井自身と釣鐘をきつく握った。 「――!」  急所を握られた痛みに、桜井は弾かれたように体を浮かしてしまう。  佐藤はすぐさま桜井の腰に腕を差し入れてきた。あっという間に四つん這いにさせられ、征服の準備が完了する。 「さて、楽しもうじゃないか」  背後で佐藤がクックッと喉の奥で笑っている。  彼の手が桜井の滑らかな尻朶や腹を這いまわっていた。中心に近いところに近づくのに、そこには触れない。もどかしさに桜井は無意識に佐藤の手を導こうと腰を動かしたが、はたと我に返る。     
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