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 しかし時は遅く、佐藤は桜井の痴態に気付いていて「触れてほしいのか?」と訊ねてくる。  佐藤は桜井の身体を知り尽くしている。直接的な前戯がなくても、桜井がどうすれば反応するのか、桜井の身体と意識を激しく淫らになるよう仕込んだのは誰あろう、佐藤だ。  不意打ちのように佐藤の指が背後から桜井自身に触れた。硬くなって蜜をこぼし始めたそこをゆるゆると扱かれる。 「んっ……」  思わず口から甘い喘ぎが飛び出る。  背筋にゾクリと走る甘い電流は、桜井の身体に官能の熱を溜めこませ、身体を開花させる合図だ。 「おまえ、嫌なんじゃなかったっけ? ここをこんなにして、俺を誘ってるけど?」 「あなたという人は。私をこんなにして楽しいんですか」 「ああ楽しいね。絶望の泉に立ち尽くして、新城の幻影に囚われているおまえは……最高に美しい」  快楽を呼吸で逃がそうとする桜井の首筋に、佐藤が噛みつくようなキスを落とす。 「痛っ……」  耳元で囁かれ、その魅惑的な低音に全身が期待に震える。それはまるで獣の交合の始まりーー。 「俺のことを残酷な奴だと思うか、恭司?」  皮膚が裂ける感覚に、唇を噛む桜井の耳元で重々しく、押し殺すような低い声で佐藤が囁く。 「呼べよ、あいつの名を」     
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