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「腰をくねらせて、自分で挿れようとしているのか。こんな姿、あの堅物が見たなら、我慢できずにおまえを欲望のままに食っちまうだろうなあ」
「そんな……」
淫蕩な身体は正直だ。腹の奥が熱く疼いてたまらない。早くこの身体を雄芯で激しく貫いてほしい。
綾樹の手で導かれているわけではない。頭ではそれを理解しているのに、桜井は蜜を零しながら、男の手で徐々に理性を食われていた。
不意に佐藤が桜井の目の前に何かを突きつける。それは綾樹の写真だった。
「それっ…!」
会議が始まる前に、こっそりスマートフォンで撮影した写真。会場を撮るふりして、ファインダーに収めた愛しい人は、長身をダンヒルの黒いスーツに包み、真剣かつ怜悧な眼差しで、口を一文字に引き結んでいた。
これから会議という戦いに臨もうとしている、綾樹の姿がディスプレイに映っている。
少し前に、海外の大手製薬会社から企業買収をふっかけられた際のものだ。
報道陣も多数集まっていて、大手老舗企業の若き社長の手腕と判断に注目された。綾樹が社長となって、初めての危機。
桜井も綾樹と一緒に会社を守るために奔走した。
写真の綾樹の双眸からは、「絶対に引き下がらない」という不退転かつ、決死の覚悟が見える。
ゾクリとするほどの気迫を纏う綾樹は、怖いほど美しい。
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