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 あれほどまでに激しく抱き合って、互いの体液に塗れてしまったのだから、きっと身体は汚れているし、なにより汗のおかげで不快で仕方ない。  桜井はのろのろとベッドから起き上がると、旅行カバンからトラベルセットとバスタオルを取り出した。ホテルのシャンプーでは桜井の髪を派手に爆発させるほどの癖がつくからだ。  身体中に鎖でも巻き付けているかのような気だるさを引きずり、バスルームのドアを開けた途端、桜井の胃にきりっと痛みが走った。 「なんだ、一緒に入りたいのか?」  そこにはまさにシャワーを浴びている佐藤がいた。桜井がリザーブした部屋なのに、随分と勝手に動きまわる。  それが気に入らなくて「なに勝手に使ってるんですか」と非難すると、「いいじゃないか」と返され、そのままバスルームに引っ張り込まれる始末だ。  温水がかかり、頭からシャツも含めぐっしょりと濡れてしまい、桜井は刺すような視線で佐藤を詰った。 「着替えが台無しです」 「そりゃこっちのセリフだ。達っちまった後、気を失ったおまえを風呂に入れて綺麗にして寝かせといてやったのに、こうしてわざわざ濡れに来たんだからな」 「気を失った? 私が?」 「ああそうだ」  佐藤は「マジかこいつ」と呆れたように笑う。どういうことかと尋ねると、佐藤は桜井を胸の中に引き込んだ。     
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