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「愛している」
ふと、佐藤が淋しそうに呟いた。
「――心底惚れた相手に、そう言えたならどんなにいいか」
「そうですね」
そこは佐藤と同感だ。
だが、今は我慢をしよう。
綾樹が春樹のことを心底愛しているのなら、それが綾樹の幸せだ。
狂詩曲のように激しく揺れる、不安定な綾樹への想いはもう少し胸の中に閉じ込めておこう。
自分は綾樹の幸せのために存在する黒子なのだ。
――とりあえず今は。
=終=
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