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 いちいち佐藤は嫌味をぶつけてくる。桜井が黙っていると「図星か」と歪に笑った。  この男のこういうところが嫌いなのだ。  人のデリケートな気持ちなどお構いなしに土足で踏み込んで、酷く荒らす。  せっかくきれいに整理したはずの過去や想いを全部滅茶苦茶にして、さらにその上を自分の都合で踏みならし、余計な押し付けの種を蒔いていく。  桜井にとって、佐藤は最低の男だ。一時でもこんな男に身体を委ねたなんて、桜井にとっては一生かかっても拭いきれない汚点だ。  頑固な害虫のような佐藤には、きっとどんな殺虫剤も効きやしない。桜井は本気でそう思っている。 「本当に私には時間がないんです。大した用でなければ、あなたの首根っこをひっ掴んで、そこの埠頭から海に叩き込みますよ」 「俺が一度として、おまえに悪い話を持ってきたことがあるか、恭司?」 「名前で呼ばないでください。それにあなたが持ってきた話で、面倒ごとでなかったのは、片手で数えて余るほどです。しかも指一本すら満足に立てられるかも疑わしい。それを考えると、限りなくゼロに近いくらいだ」 「相変わらず手厳しいね」  佐藤は愉しげに笑いながら、両手の指を組んで、肘をテーブルにつけた。     
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