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おそらく綾樹と春樹は身体の関係もあるのだろう。春樹に対する綾樹の恋着ぶりは半端なく、彼を手放したくないばかりに、彼のためのマンションまで購入し、自宅ではなく春樹のところから出勤することも増えた。
だが春樹のおかげで、綾樹の心に余裕が生まれたのも事実だ。
常に仏頂面で、誰に対しても愛想ひとつなかったが、時折笑顔も見せるようになり、社員に対して思いやりを持つようにもなった。
社員の士気も向上し、会社の業績も順調、綾樹自身の仕事もプライベートも充実していたようだが、春樹の母親の高木ひろえが現れたことで事態は悪いほうへと舵を切った。
春樹を溺愛するあまり、最愛の息子を綾樹に連れ去られたと思い、取り戻しに来たひろえと口論になり、綾樹は刺されて大怪我を負った。
それだけではない。大企業の社長が刺されたという事件はスキャンダルとなり、連日、テレビでは綾樹と桜井の画像が流され、ありもしない噂話や愛憎劇がお茶の間を賑わせた。
しまいには、桜井がブリリアント社を乗っ取るために仕組んだという説まで飛び出し、一時、桜井はマスコミにパパラッチされる事態となった。
そして桜井自身がそれを否定も肯定もしなかったので、マスコミの取材合戦はさらに過熱し、疑惑と好奇の目は桜井に集中した。
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