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#3
「……う」
目を開けると、電灯の明かりがいきなり目を突き刺した。あまりの眩しさに眩暈がして起き上がる気にもなれない。
乱暴に脱がされたスーツは、きれいにプレスされて横の壁側のハンガーにかかっている。佐藤がクリーニングサービスにでも頼んでくれたのだろう。
「余計なことを……」
もともと世話を焼かれるのが好きではないのだ。自分の領域を侵された気がして、細やかな気遣いすらイライラする。
そのイライラの原因である佐藤の姿は、部屋にはなかった。
「やるだけやって帰ったんですかね。まったく」
桜井自身もTシャツとスウエットパンツを着せられていることに気付く。
これは自分が持ってきたものだ。勝手に人のカバンを物色したかと舌打ちをこぼす。
おそらく佐藤が着替えさせてくれたのだろうが、桜井はそれを覚えていない。セックスの後あたりから記憶がどうも曖昧だ。
どうしたものかと思い出してみるが、脳を串刺しにするような鋭い頭痛のおかげで、どうにも考えがまとまらない。
さらに、かなりの汗をかいているようで、着ているTシャツが肌にまとわりついて気持ち悪く、腰のあたりまでもが怠かった。
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