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 おかげで綾樹自身の手間も増えたが、どうも彼も人から頼ったり頼られたりして、楽しく仕事をしているようで、業績も右肩上がりの高水準をキープしている。  桜井にとって大切なのは、綾樹と彼を取り巻くものすべてだ。当たり前だがその中には会社も入っている。桜井が自分の恋を犠牲にした結果は、業績として如実に顕れているのだった。  だがそんな若手のやり手社長と名高い彼も、こと酒に関しては、綾樹より年上の役員連中にはかなわないようだった。  綾樹から仏頂面の仮面と生真面目さを取り払い、あんなふうに男の色香漂う、ルーズな姿を引きずり出してしまうのだから、酒とは恐ろしい。  社員らと宴会の席で和気あいあいと飲むなんて、以前の彼では絶対になかった。しかも多少の失言も笑って済ませる器のでかさも身に着けたようで、宴会の席では社員と社長の距離を急速に縮めている。  これも綾樹の恋人がもたらした「僥倖」だろう。  だがなれ合っているわけではない。その辺の線引きは桜井が目を光らせている。  さて、綾樹はといえば、いい感じに酔いがまわっているようだ。 「いいお酒を楽しまれたようですね。綾樹がそんなに呑み助とは知りませんでした。明日ちゃんと起きられますか?」 「寝坊したらおまえが起こしてくれるだろ、桜井」  桜井がいるから、私は安心して寝坊ができると、綾樹はご機嫌だ。     
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