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サッカーのリーグは1部、2部、3部とカテゴリーがある。下位3クラブないし2クラブは下のカテゴリーに降格する決まりだ。もっとも、昇格もあって。地方選手権からこつこつと全日本に上がってくるクラブもあり、夢があると言えば夢がある。
獅々田ホワイトナイツも地方選手権からこつこつと上がってきたクラブなんだけど。夢を叶えたはずなのに、今は地獄に叩き落されたようだった。
「こんな思いをさせてすまない。さ来年は1部に戻ってこられるように頑張るから、引き続きの応援をお願いします!」
監督が選手をかばうように前に出て、土下座せんがばかりに頭を下げて、サポーターたちに詫びる。しかし。――
「ブーブーーーー!」
ねぎらいの言葉もなく、ひたすらのブーイングが飛ぶ。もう話し合いにならなかった。
「ねえもう帰ろうよ」
私はいたたまれなくて、ゆっこに一緒に帰ろうと言ったが。
「冗談じゃないわ、あたしたちに恥をかかせて。ブーブー!」
ゆっこは親指を下に向けて他の人たちと一緒にブーイングをする。
「ねえ、言いすぎだよ。選手たちも頑張ったんだし、もうこのくらいで」
「なに甘い事言ってんのよ! いく、あんたほんとにお人好しね!」
ゆっこが私に食って掛かる。こんなひどいことを言うような子じゃなかったのに。負けが込んで最下位になったころから、言動が怪しくなってきた。
「でも、やっぱり」
「ふん、帰るならひとりで帰れば!」
「そんなことを言うの?」
「言うわよ! それに」
「それに?」
「あんたこれが悔しくないの?」
「悔しいよそりゃ」
「その割には変に落ち着いてさあ。やる気あったの? ただ見てるだけの人はサポーターじゃないよ!」
「ええ……」
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