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潤は振り向かず、自身の領域に背後からじわりと侵入してくる色めいた空気を吸い込み、弱々しく吐き出した。
かろうじて保っていたはずの均衡が少しずつ崩れていく。怖気づいて理性をかき集めようと動きまわる心と、それでも恐怖に足を踏み入れてしまいたい静かな興奮がせめぎ合う。
狂おしいほどのなまめかしさに支配される空気の中、右の腕が熱い手に掴まれた。その力強い感触に息を止め、まぶたをきつく閉じる。
「先生……だめです」
「先生と呼ばないでください」
まるで警告のような言葉にはっと目を見ひらいたとき、背後から激しく抱きすくめられた。
「潤さん……」
耳にかかる甘やかな声とともに。
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