第二章 雪泥鴻爪

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「あっ、あぁ」 「潤さん……潤……」 「……っ」  一瞬、色気のある低音に呼び捨てにされて意識が飛びそうになった。  ぼんやりとした視界の中、耳を離れた肉厚の舌が目の前に迫る。誘われているのだと知った潤は、広い肩にしがみつきながら自ら舌を絡ませた。薄目で見つめ合いながら交互に吸いつき、粘液を交換する。  濡れたショーツの陰裂をなぞった男の指が、奥で秘唇をひらく蜜口を押し込んだ。 「あんっ……」  反射的に腰を引いたが、硬い腕にぐいと引き寄せられた。ショーツのぬめりを確かめるように藤田は指を前後に揺らす。 「ああ……こんなに染みている」  かすかに触れたままの唇が撫でるように動き、淫猥な言葉を口内に吐き出した。  その有り様をまざまざと思い知らされ、潤は思わず唇を離し首を左右に振った。しかし、欲情した雄のまなざしが容赦なく詰め寄る。
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