第二章 雪泥鴻爪

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 夫のものすら、望まれたときにしか触れることはなかった。いかにこれまで自分が受け身だったかを痛切に感じながら、潤はそれに這わせた手をぎこちなく上下させた。夫のよりも迫力を感じさせるのは自分自身の興奮のせいだろうか。 「んん……」  色っぽく唸った藤田が噛みつくように唇を貪ってきた。顔を傾けて下から深くえぐり、角度を変えて今度は上から押さえ込む。それに加え、股間を占領する無骨な指は小刻みに揺れて秘芯に振動を与える。  とうとう膝を立てていられなくなった潤はへたり込んだ。 「んっ、ふ、ぁ……」  意識が散らばりはじめる。彼の分身を刺激することを忘れ、あるいは彼が意図的にそうさせたのかもしれないが、深い口づけに夢中で応えているうちにゆっくりと後ろに押し倒された。  気だるげに上体を起こした男の視線が、無防備にひらいた太ももの間に注がれる。潤が羞恥心からとっさに脚を閉じるよりも先に、藤田はそれを掴んでさらに大きく広げさせ、高い湿度を保つ中心に顔をうずめた。
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