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車が揺れ、手中にあるカップケーキのラッピング袋がかさりと音を立てた。
視界の端で藤田の手がステアリングを握り直すのが見えた。
「電話……やはりご主人でしたか」
低い声に問われる。
潤は「いいえ」と小さく呟いた。
「女将です」
沈黙が流れる。その沈黙の中には数えきれないほど多くの言葉と感情が飛び交う。なにかを伝えようとしてくる無言に耐えられず、潤は自ら口をひらいた。
「私、追い出されてしまうのでしょうか」
弱音を吐いて安心したのか、湧きあがってきた涙が視界を覆った。こぼれ落ちないように目をひらいてまばたきを我慢する。
「僕のせいです」
粛々と、低音が落とされた。なにかを背負おうとしているような声だった。
潤は俯き、首を左右に振った。ぽたぽた、と涙が落ちた。
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