第三章 一日千秋

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 ショーツの上から指で恥丘をなぞると、わずかに吸気が弾んだ。 『潤さん?』 「はっ、はい」  低い呼びかけに慌てて答えた声は上ずり、思いのほか湿り気を帯びていた。藤田の反応が気になったが、彼は吐息のような笑いを漏らすだけで会話を続けることはなかった。  妙な沈黙を感じつつ、ショーツの中に手を忍ばせる。自身の手の冷たさに背筋が震えた。  柔らかな茂みの奥は熱く滾り、秘裂はすでに蜜を吐き出している。とろみを掬い上げた中指を肉のふくらみに押し込み、隠された蕾を探り出した。  声を押し殺しながら、慣れた手つきで芯を塗りつぶしてゆく。ほとんど開花寸前のそこは繊細な指の動きにも大げさに反応した。 「ふっ、ん……」  艶声が漏れた。潤は手を止め、口をつぐむ。  後悔したのも束の間、受話口から長いため息が聞こえた。それはなにを物語っているのか。顔の見えない状況が不安を煽る。
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