第三章 一日千秋

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 心臓がどくどくと脈を速め、流れ出した快楽が電流のように背を走り伝って脳天まで突き抜け、白く弾ける。潤は抗うことなく本能のままに昇りつめる。  飽和しきった欲望を吐き出すような男の喘ぎが耳に入ったのと同時に、自身も頂へ追い詰められた潤はひときわ大きな嬌声をあげた。脳内では彼が潤の華奢な身体を抱きすくめ、ひときわ深い最後の一突きを捧げて白い欲を噴き上げる。  声にならない声とともに背が反り全身がこわばると、不随意に突き上がる腰が激しく痙攣した。直後、ふっと脱力した。  深く沈み込むじっとりとした余韻の中で、止めていた呼吸を取り戻すように大きく繰り返す。  指を咥えたままの熱い沼からそれを引き抜いて目の前にかざし、透明な光沢を放つ細い手を漫然と見つめる。こんなふうに自分で自分を乱れさせたのはいつぶりだろうか。 『……潤さん』  電話越しに耳元で発されたその低い囁きが、唐突にある出来事を甦らせた。
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