第三章 一日千秋

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「……うっ、あ、ぐ……っ」  異物を吐き出そうとする喉の動きと息苦しさに視界が滲む。潤は反射的に歯を食いしばった。ごり、と薄い肉に覆われた骨を噛んだのがわかった。  痛みからか一瞬顔をしかめた誠二郎は、ようやく指をぬるりと抜いた。  咳き込みながら安堵した矢先、上半身を隠しているセーターをインナーごとめくり上げられ視界が暗闇に覆われた。抵抗する腕は力ずくで退けられ服を頭から抜き去られると、ふたたび夫の鋭利な視線に晒される。かすかに汗をかいた身体は急激に寒さを認識した。 「君がこそこそ書道をやっていることなんてとっくに知っていたよ」  誠二郎は静かで残酷な声を落としながら、浮かせた背中に手を差し入れてホックを外し、ブラジャーを剥ぎ取った。
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