第三章 一日千秋

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 冷酷にも見える薄い笑みの中でそう言い捨てた男が、スラックスの前を開けて下着をずらし、上向きに勃ち上がる生身のそれに手を添える。  こちらに向けられるのは夫のまなざしではなく、まるで生殖本能に突き動かされる雄のそれである。  腰を掴んで引き寄せられ、弱々しく拒む脚を簡単にひらかされる。閉ざされた入り口をこじ開けようと剛直をあてがわれたとき、最後の砦は崩壊した。 「いっ……あ、あっ」  硬い異物がねじ込まれ、鋭い痛みが心を引き裂く。加減知らずの侵入者は無理やり抽送しながらその身を沈めてくる。  抉られるたびに体内を鋭利痛が走る。薄い粘膜をこすり剥がされていくような強い刺激は快感をもたらすことなどない。痛い――頭を埋め尽くすその感情を口にすることもできず、きつく目を閉じて歯を食いしばり激しい揺さぶりに耐える。
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