第三章 一日千秋

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 やがて激しく打ちつけていた腰が最後の一突きをいれて静止すると、男は小さく呻きながらワイシャツを着たままの身体を何度か小刻みに震わせた。硬い怒張が女の奥深くに白濁した穢れを噴き上げたのだ。  苦痛な時間が終わり、潤はかすかな安堵感を覚えながら静かに呼吸をする。肩で息をする夫は役目を終えた分身をいまだ引き抜かずにいる。白いシャツにはところどころに墨液がついてこすれた跡が見える。  険しい表情にわずかな悲愴感を滲ませて、誠二郎が静かに視線を落とした。しかしそれは潤の視線と交わることなく、墨の張りついた裸体に注がれ、ふらりとさまよい、こたつテーブルの上に引き寄せられる。  その冷たいまなざしがふたたび怒りの色を取り戻したように見えた直後、誠二郎がそこに手を伸ばした。
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