第三章 一日千秋

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 誠二郎の手は止まらない。半分になったそれらを重ねてさらに破り、また破り、どんどん細かくしていく。その手からこぼれた紙片がはらはらと舞い落ち、墨で汚された肌をそっと隠した。  すべてが終わると、深く息を吐いた誠二郎が身じろぎをした。  ようやく体内から異物が抜かれ、閉塞感から解放される。潤はすかさず下半身に力を入れた。体外に吐き出された淫液がぬるりと陰部を伝う。意味のないことだとわかっていた。だが、無意識に働いた妊娠を拒む意志がそうさせた。  思うがままに欲を吐き出して今さらなにを言えばよいのかわからなくなったのか、それともはじめからなにも言う気がないのか、誠二郎は無言でズボンを上げる。その手で潤の腕を取り、手首のネクタイをほどいた。目も合わせずに。
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