第三章 一日千秋

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「もう素直に言うことを聞く子供じゃないんだよ、俺は」  吐き捨てれば、背後で息を呑む気配がし、細い吐息が耳をかすめた。 「……知っているわ」  小さな声のあと、美代子の身体が背から離れた。そうして、かすかに衣擦れの音が聞こえた。 「大人になったのよね。やっと……」  沈黙の中に落ちた、濡れた声。  妙な予感がして振り向くと、そこには本来の姿を取り戻した美代子がいた。横座りをする着物の裾を自らの手で割り、白い太ももを晒して恍惚の表情を浮かべている。まっすぐに誠二郎の目を見据えながら、彼女はゆっくりと股をひらいた。 「……っ」  誠二郎は言葉を失った。自身の目を疑い、しかしそこから目を離すことができなかった。  下着をつけていない剥き出しの陰部がそこにある。うっそうとした茂みの下、透明な愛液でしとどになったそれが妖しげな光沢を放つ。
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