第三章 一日千秋

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 首元の白い半衿を掴んだ彼女はそれを着物ごと胸から引き剥がそうとする。すぐにでも前をひらいて豊満な乳房を解放したいのだろうか。  誠二郎は帯をほどいてやろうかと一瞬思ったが、その手間すらもどかしく感じ、湧き上がる焦燥感のまま彼女の隣に横たわると着物の合わせから手を差し込んだ。  薄い襦袢の上からその胸を荒々しく掴む。そこにこもっている彼女の熱を感じながら、おそらく和装ブラジャーにより本来のふくらみが抑えられているそれを広げた手のひらと指でめちゃくちゃに揉みまわす。あのころに戻ったように、不器用で、乱暴で、激しい恋情を隠さない愛撫を与えた。 「あっ、あっ、許して……もう許してっ」  美代子が泣きそうな顔をして肩にしがみついてきた。首の後ろに回された手の感触に懐かしさを覚えながら、誠二郎は至近距離にある彼女の濡れた瞳を見つめる。左目の下の泣きぼくろは、昔と変わらず彼女のどこか物憂げなまなざしを妖艶に見せている。
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