第三章 一日千秋

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 細い顎がわずかに前に突き出され、淡紅に色づいた唇が薄く隙間を作った。奥には濡れた舌が待ち構える。  美代子の意図はすぐにわかった。しかし誠二郎はそれに自分の唇を重ねることなく、その胸元から手を引き抜いた。  哀しみに押しつぶされそうな表情で眉根を寄せる彼女に鋭い視線を返しながら、白い帯の上部でかすかに存在感を示す縹色の帯揚げに指で触れ、同じ色の帯締めを横になぞる。曖昧な仕草に期待を裏切られ息を乱す彼女の無言の要求を無視し、腰を撫で下ろしていく。  露わにされたままの太ももに指が触れたとき、彼女の瞳はふたたび淫猥に輝いた。  内ももの間に手を差し入れて柔く揉むと、吐息を漏らした美代子が自ら脚をひらく。彼女の望みどおり、誠二郎は指の腹で卑猥な湿地を軽く撫で上げた。 「あぁっ!」  それだけの刺激に、美代子がはじけ飛ぶような反応を見せた。
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