第三章 一日千秋

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 ぐわりと現れた勃起。見慣れた自分のものとは思えないほど大きく、硬く、狂暴に感じる。疲れなど知らなかったあのころのように、それは鋭角的に反り上がっている。  わずかな困惑の隙に、生身の敏感なそれは美代子の手のひらに包まれた。うっ、と小さく声が漏れると、微笑を含んだ上目遣いに捕らえられる。 「変わらないのね。……熱い」  美代子は猛りに目を落としてうっとりと囁くと、肉茎の形状を確かめるように手のひらを密着させ滑らせはじめた。 「うっ、ぁ……」 「ふふ。まだなにもしていないわ」  情けない声を出して腰を浮かす誠二郎に勝ち誇ったような言葉を返し、彼女はあっけなく手を離してしまう。思わず激しい視線を送る誠二郎を横目に、彼女は洗い桶に手を伸ばすと浸されたままのハンカチをつまみ上げた。絞って広げると、淫欲を持て余して情けなくすら見える剛直を覆った。
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