第三章 一日千秋

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 美代子は自身に向けられた雄の昂りに固唾を飲み、こわごわ身体をひらいて待っている。抵抗する気はないようだが、好奇心と不安が入り混じった表情を浮かべている。 「いいよな、もう、待ちくたびれたよ」  誠二郎は焦燥を口にしながら、湿り気を帯びた剛直を女陰めがけて振り下ろした。  ぴち、ぴち、ぴち――濡れそぼった蜜唇に打ちつけるたび、女の腰が呼応するように跳ね上がる。  もともと下がり気味だった眉をさらに八の字に垂らした美代子は、自らの手で裂け目をひらき、湿った吐息まじりに言った。 「いいわ」 「……っ」  全身を興奮が駆け上がった。  ついに、その最奥への侵入を許されたのだ。限界まで追い込まれた欲望は加虐心を纏った狂気に変わりはじめる。 「あんたはもう、親父や兄貴のものじゃない」  低く静かに落とした声はその奥底に憎悪を宿している。
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