第四章 尤雲殢雨

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 わずかに残った雪でぬかるむ日陰の道に大粒のしずくがいくつも落ちては溶けていく。  嗚咽しながら、ふと思う。藤田は一連の経緯を知っていたのだろうか。  はじめから好意的な人だった。心の隙間にするりと入ってきて、強引なはずなのにそれを感じさせない絶対的な穏やかさがあった。  だから気づかなかった。一度や二度会っただけの女にあんなにも熱く激しいものを与えようとしてきた理由を。考えてみれば、あれほどの人が自分のような平凡な女に心身を曝け出そうとするはずがないのだ。  夫と彼女の情交によってすべてが信じられなくなった今、藤田の存在もこうなるための計画の一部に過ぎなかったのではと思えてくる。女将もそうだ。しきりに野島屋から離れさせようとしてきた。  虎視眈々と、彼らはこの機会を狙っていたのだろうか。
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