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寒さに身体が震え、潤は思わず足を止めた。凍える手を吐息であたためると、その場に呆然と立ち尽くした。
なにかあるたびに思い出すのは、人生の岐路に立たされた五歳のあの夏の日。
姉には意志があった。幼いながらも自らの意志で状況を変えようとし、自らの意志で居場所を選んだ。
あの田舎町で、彼女は地元の男性と結婚した。子宝にも恵まれ、すでに当時の自分たちと同い年くらいになる姉弟がいる。
いつか彼女は言っていた。自分の選択を後悔していない、と。綺麗な笑顔で。彼女は自分で自分を解き放つことができたのだろう。
どうしようもなく逃げたくなったとき、どこへ行けばよいのか自分にはわからない。姉のように意志を持つことができなかった事実がふとした瞬間に甦り、いまだに過去の呪縛から自分を解放できず何者にもなれない自分を嘲笑い、足をすくませるのだ。
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