第四章 尤雲殢雨

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 帯枕の紐の結び目を引き出し、ほどけば、太鼓結びが背中から一気に崩れ落ちる。ずり下がりつつも腹部に巻きついている残りを男の無骨な手が掴んで剥がす。それに応えるように、潤は伊達締めと腰紐をほどいた。  前をひらかれ、肩から抜かれた着物がするりと剥がれ落ちた。  白の長襦袢が晒される。軽くなった身体とは裏腹に不安で動けずにいると、「失礼します」という声とともに、藤田が身体に触れないよう丁寧に伊達締めと腰紐を取り除いた。  ひときわ大きく心臓が鼓動したとき、ついに長襦袢を脱がされた。長い髪は、太い指によってゆっくりと後ろに払われる。  露わになった首元を藤田が覗き込んできた。 「ここも……」  首筋を指でなぞりながら呟いた彼は意気消沈した様子で視線を下げていく。だがふいに静止し、表情をこわばらせた。
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