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低い咳払いが、その喉からわずかに発された。
スリップ型の白い肌襦袢。男の目には、その透けた生地の奥にある、なにも着けていないひかえめなふくらみが見えているのだろう。勃起した色づきが薄い布を押し上げ、うっすらとその粒を浮かび上がらせている。
自身の醜態を思い知り、潤は胸元に腕を押しつけて藤田に背を向けた。急に情けなくなってきた。
「潤さん」
優しく名前を呼ばれても、ただ黙って首を横に揺らすことしかできない。
彼に対する冒涜だ、と思った。墨で弄ばれた痕を残した肌を晒すなど、書家である彼に対して無礼極まりない行為だ。
「見せてください」
固く請われ、背筋に緊張が走る。
「……僕に、見せて」
その低い声は怒りを心に押し込めるようにかすかに震えた。
「だめ……」
要求に応えられるはずもなく、かろうじて声を絞り出すと、肩を優しく掴まれた。そのあたたかな手は冷えた腕を撫で伝い、胸の前で交差させた手を握る。そのまま身体ごと抱きしめられた。
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