第四章 尤雲殢雨

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 低い咳払いが、その喉からわずかに発された。  スリップ型の白い肌襦袢。男の目には、その透けた生地の奥にある、なにも着けていないひかえめなふくらみが見えているのだろう。勃起した色づきが薄い布を押し上げ、うっすらとその粒を浮かび上がらせている。  自身の醜態を思い知り、潤は胸元に腕を押しつけて藤田に背を向けた。急に情けなくなってきた。 「潤さん」  優しく名前を呼ばれても、ただ黙って首を横に揺らすことしかできない。  彼に対する冒涜だ、と思った。墨で弄ばれた痕を残した肌を晒すなど、書家である彼に対して無礼極まりない行為だ。 「見せてください」  固く請われ、背筋に緊張が走る。 「……僕に、見せて」  その低い声は怒りを心に押し込めるようにかすかに震えた。 「だめ……」  要求に応えられるはずもなく、かろうじて声を絞り出すと、肩を優しく掴まれた。そのあたたかな手は冷えた腕を撫で伝い、胸の前で交差させた手を握る。そのまま身体ごと抱きしめられた。
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