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「こちらを向かなくていいから」
後ろから囁かれ、きつく閉じた腕をさすられる。熱い手にほぐされ、じわじわと火照りはじめる肌と、湿り気を帯びてくる呼気。
わずかに腕の力をゆるめた隙に、薄布の下に滑り込んだ彼の指が胸をはだけさせた。
思わず見下ろした白肌は、よく見るとやはりうっすらと色を残している。しっかり洗ったつもりだったが、気が動転し見落としていたのかもしれない。
これ以上は見られたくない。そう思い、潤は襦袢をひらく藤田の手を握って自身の胸に押しつけた。
すると彼は、他方の腕ですべてを包み込むようにして潤を抱きすくめた。
強い締めつけとともに耳元に降ったのは、ひとつの熱い吐息と、厳然たる声だった。
「僕が洗います。風呂に入りましょう」
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