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ヒーターの前に出された座布団に正座し、待つこと十数分。廊下側の襖がひらき、精悍な顔が覗いた。微笑をたたえて頷いた彼に従い、潤はぎこちない動作で立ち上がった。
冷気が漂う薄暗い廊下。右方に玄関が見えるところまで戻ると、藤田は左方に足を向けた。
その背中を追って狭く長い廊下を奥に進む。突き当たりには簡易な洗面台、その右側に見える型板ガラスの引き戸から灯りが漏れている。
戸を開けた藤田に招かれて入ると、そこは脱衣所だった。浴室に繋がるであろうすりガラス戸が目の前にあり、左に位置する目隠し加工のない幅狭なガラス戸の向こうは土間になっているようで、洗濯機が見える。
藤田が作務衣の上衣を脱いだ。怯懦な目を向ける潤に、彼は苦笑を返す。
「脱ぐのはこれと靴下だけです」
その言葉どおり足袋の形をした靴下を脱ぎ捨てた彼は、黒い長袖のインナーの袖と紺鼠色の下衣の裾をまくり上げた。
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