第四章 尤雲殢雨

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 腰から膝までは白の湯文字で隠されている。巻きスカートのように腰に巻きつける下着であり、その中にショーツは履いていない。  うむ、と短い唸り声を発した藤田が背後に回り込んだ。  腰のくぼみに指を添えられて潤がぴくりと反応すると、彼は吐息のような笑い声をこぼし、内側に入れ込んである力布の端を引き出した。  下腹部への締めつけがなくなると同時に布が落ちて下半身が晒され、潤はひそかに身震いした。腰のくびれから尻のふくらみまで、熱い視線になぞられる気配を過敏な神経が伝えてくる。耐えられず、藤田に背を向けたままその場にしゃがんで足袋を脱いだ。  からからと浴室の戸がひらかれた。吐き出された熱気が裸体に貼りつき、冷えた湿り気に変わる。  こちらを見ない横顔を窺いながらそろりと立ち上がり、濃灰色のバスマットを踏んで中に入る。昔ながらの冷たいタイル張りの床に足裏がひやりとし、肩をすくませた。
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