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まっすぐに放たれる視線に促され、黙って風呂椅子に湯をかけ、藤田に背を向けて腰かける。
彼に触れられることを待つ背中は、彼の目にはどのように映っているだろう。惨めで憐れだろうか。それとも嬉々として見えるだろうか。
自分はどのような顔をしているだろう。鏡のない浴室でよかった、と潤は俯きながら思った。そうでなければ、恍惚と頬を染めるみっともない女と目を合わせなければならなかったかもしれない。
かすかに水音がして、背後に彼の気配が降りた。その息遣いをすぐそばに感じ、きつく閉じた膝をこすり合わせる。
ふいに後ろから差し出された、麻のボディタオル。これで洗ってくれるということだろうか。「洗濯済みです」と言った彼の気遣いに無言で頷いた。
大きな手が湯桶に浸したタオルを石鹸で泡立てる。しゃくしゃくという摩擦音、さわやかな香りに包まれる靄の中、潤は自身の視線が熱を帯びていくのを自覚しながら視界の端に映る光景をひそかに見つめた。
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