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柔い快感が背筋を駆け上がる。身震いを抑えようとこぶしを握りしめれば、腰を洗う彼の手も止まった。
「そんなに怯えないで」
優しく諭すような声だった。
突然の言葉にとっさに答えられず、しかしなにか返さねばと口をひらいて考えているうちに、左腕を掴む手が離れてしまった。
「あ……」
違う。怯えてなどいない。怯えるわけがない。そう否定しようと潤は身体を後ろにひねった。
そこには、慈悲深さと秘めた欲望を共存させる男の瞳があった。だが彼はそれをまばたきの中に隠し、目を細め、困ったような笑みを浮かべる。
その表情にどうしようもなく心をくすぐられ、思わず身体の向きを戻す。背後には容赦なく情欲を煽り立てる雄の気配が迫る。抱かれそうになったあの夜のように。
「……違う。怖いんじゃないの」
自身の声が甘く湿っているのを認識しながら、潤はひとりごとを吐くようにタイル張りの壁に向かって呟いた。
「感じて……しまうから」
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