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浴室に流れる静寂。自分の呼吸の音が妙にはっきりと聞こえる。
背後で、はあ、と深いため息が響いた。
それを悲観的に捉えて心が沈みそうになったとき、左腰をぐっと掴まれて潤は縮み上がった。
「ひゃっ」
「あ、ごめん」
「…………」
「こちらを向いて」
かすれた声。
右肩に置かれた手が後ろに引く力を強める。抗いきれない。潤は椅子からわずかに腰を上げると、完全には隠せないとは知りつつも胸元と下腹部に手を添えて少しずつ反転し、座り直した。
ボディタオルを手にしゃがんでいる男と向き合った。目が合うと、彼は切なげに微笑む。感情を抑えながらもなにかを訴えかけるようなその瞳から逃れようと、潤は目を伏せる。
左肩から胸に垂れる髪の束が、太い指に払われて背に流れた。泡に濡れたそれが肌に張りついたのがわかる。
「少し、強くします。痛ければ言ってください」
静かな声のあと、露わになった首にタオルが押し当てられた。
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