第一章 顔筋柳骨

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 その話に聞き入りながらも、潤は思った。この人は“下手”を“個性”だと褒めてフォローしてくれているに過ぎない。きっとそうに違いないと。  しかし、藤田はこうも言った。 「とはいえ、書写の基礎を身につけてこその書道ともいえます。それを踏まえたうえで、とてもよい作品です」  潤は納得した表情を繕ってみせたが、一方の藤田は困ったような笑みを浮かべた。 「つまり、僕はあなたの書を美しいと思ったということです」 「……っ」 「もっと専門的に説明することもできますが、それだと遠回しになってしまう気がして」  息を呑んだ潤に、藤田は優しいまなざしを送る。 「わかってくれましたか。僕の評価を」 「あ、ありがとうございます。でも、ここが少し滲んでしまいました」  指差した『初』の三画目に視線が注がれる。 「先生の作品のように力強く書きたかったのですが、なかなか……」
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