第一章 顔筋柳骨

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 言葉の途中で、藤田がわずかに片眉を上げた。  それを目にした潤は、なんて失礼なことを言ってしまったのだ、と激しく自分を責めた。「あなたの真似をしようとして失敗しました」と言ったようなものだ。どれほど練習しても、たとえ逆立ちしたって、プロの書家である彼のように書けるわけがないのに。  美代子によく言われるのだ。「過度の謙遜はかえって相手に失礼よ」と。女将にも「言葉の選び方を間違えないように」と言われたことがある。  弁解しようと潤が唇をひらくのと同時に、藤田が言った。 「僕の書をご覧になったことが?」  その表情と声は怒りを示してはいないものの、そこには鋭い威厳が鎮座しており、じりじりと迫ってくる。 「八月に、先生の個展で……」  おずおずと答えると、意外にも藤田は目を見ひらいて口角を上げた。
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