第二章 雪泥鴻爪

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 別棟二階の宴会場は、すでに内務係によってセッティングが進められていた。檜舞台付きの開放的な和室空間には、おそらく五十を超える数の膳が恐ろしいくらいに整然と並んでいる。やがてここに客が入り、料理が運ばれるころには厨房が戦場と化すだろう。  まずは少しでも宴会の内容を把握しようと思い、潤は忙しそうに動きまわる幾人もの内務係を観察した。いくらか心に余裕のありそうな雰囲気を醸し出す年配の女性を見つけ、声をかけてみることにした。  まんじゅうのように丸い笑顔が印象的なその顔と名前を一致させるため、記憶を辿る。 「あの人は……高橋さん」  ぼそりと呟く口元を手で隠しながら、ふくよかな女性に向かって足を踏み出した。  まもなくそれに気づいた彼女は意外そうな表情を浮かべ、足早に歩み寄ってくる。
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