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「お姉さん、ごめんね。こんなおじさん気にしなくていいからね」
「い、いえ……」
男性はその顔を歪め、拗ねた子供のように声を荒げる。
「なんだよお。少しくらい構わないだろう」
「お客様……皆様に順序よく召し上がっていただくためにすばやく料理をお配りしていますので……申し訳ございません」
潤は折れそうな心をできるかぎりの笑顔で覆い隠し、男性の気分を損ねないよう言葉を選んでお酌を断った。早く配膳の仕事に戻らなければという焦りもあった。
すると、男性が目の色を変えた。
「そんなマニュアル対応じゃつまらないよ」
「……っ」
「君、新人?」
ここの嫁です、とはさすがに言えずに「はい」と返事をすると、男性はうすら笑いを浮かべた。
「やっぱり。笑顔が引きつっているからすぐにわかったよ。全体的にぎこちないんだよね。サービス精神が足りないっていうかさ。そんなんじゃ老舗旅館の仲居は務まらないよ」
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