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不機嫌に歪む狸顔が脳裏に浮かび、あの男性から浴びせられた言葉が甦る。それは心の根底にある劣等感を一気に呼び起こす。女将なら、それかたとえば美代子なら、客に「つまらない」などと言わせることはないのだろう。潤は、しつこく溢れようと湧き上がる涙を隠すため俯いた。
「潤さん。あなたがそこまで気に病むことはありません。木村さんは新入りに対して難癖をつけるのが趣味みたいな人でね、僕も書道連盟に入ったばかりのころは宴会で洗礼を受けました。女将さんもそのときのことはよく知っています」
優しい言葉を素直に受け止められず、力なく首を横に振る。
「私のせいで、女将や従業員の皆さんに迷惑をかけてしまったんです。……私、本当に向いてないのかも」
ひとりごとのように本音を吐き出したとき、小さく噴き出す声が聞こえた。
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